「寒い夜の過ごし方」 |
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深夜、ビジネスホテルのツインルームに宿泊していたレオリオは、 人の動く気配にふと目を覚ました。 「クラピカ?」 キッチンスペースには、カップを持ってクラピカが立っている。 「すまない。起こしてしまったか?」 「いや……でも何してんだ?こんな時間に」 レオリオはベッドを出て歩み寄った。 湯気のたつカップを包み込むように持ちながら、クラピカは 中身を飲み干す。 「白湯を飲んでいたのだよ。短時間で身体が温まる効果がある からな」 「寒いのか?」 確かに季節は真冬。夜間ともなると一気に気温が下がり、室内 だというのに、吐息が白く視認できる。 「故郷ルクソ地方は高地の為、冬季は寒さが厳しかった。それに 比べたら、ここははるかにマシなのだよ」 そう呟くクラピカの手にレオリオは触れる。 白い指先は暖かいカップを持っていても、氷のように冷たかった。 「ホントだ。ずいぶん冷てぇな。お前、末端冷え性か?」 「何だそれは」 手だけでなく、身体ごと包む込むようにレオリオは、背後から クラピカを抱きしめる。 「寒いんなら、暖めてやるぜ」 優しさから出た言葉ではあるが、含まれる下心は否めない。 当然クラピカは即座に察知し、彼の腕からするりと逃れた。 「明日は朝が早いのだ。今夜は充分に休息を取っておかねば なるまい?」 やわらかな口調ながら明白な拒否に、レオリオは肩を落とす。 クラピカはカップを置き、再びベッドへ戻ってゆく。 レオリオも残念そうに溜息をつき、自分のベッドへと戻った。 「レオリオ」 ふいに、澄んだ声が名前を呼ぶ。 振り向くと、クラピカは毛布の上掛けを少し開けた。 「こちらへ来ないか」 「えっ」 レオリオは思わず喜色満面の声を上げる。 「言っておくが妙なマネは許さんぞ。お前は体温が高くて 暖かいから、そばにいた方がよく眠れそうだと思っただけだ。 ――― 今夜は寒いからな」 即座に釘を刺され、レオリオの期待は一瞬にして消え去った。 「オレは湯たんぽですか…」 こぼしながらも、枕をかかえて隣のベッドへ移動する。 そして寝転がると、彼に擦り寄るようにしてクラピカもコロンと 横になる。 しなやかな感触と甘い体臭が、レオリオにとっては嬉しくも辛い。 「…お前ねー。けっこう拷問だぜ、コレ」 「耐えられなければ隣へ戻れ」 「……がんばります」 クスクスと笑うクラピカを多少恨みがましく思う。それでも 一人寝よりはずっと良いので、レオリオは苦笑いをしつつ、 クラピカの肩を抱き寄せた。 互いの体温が伝わり、暖かな空間が二人を包む。 「やはりお前は暖かいのだよ」 「南国の男は、ハートに太陽が宿ってるからな♪」 レオリオの気取った台詞に、クラピカはまた笑った。 次第に上昇するのは、物理的な温度だけではない。 愛しい相手の体温を感じる。 それは心までも、ぬくもりに満たしてゆく。 嬉しくて、穏やかで、なんだかとても幸せな気分になる。 安堵と心地よさの混じったまろやかな感情が睡魔を誘った。 「…なぁ、せめておやすみのチューくらい…」 だが視線を移すと、クラピカは既に瞼を閉じている。 「もう寝たのかよ?」 返事は無い。 この状況下で、なんというつれない相手であることか。 もう少し甘い展開があっても良かろうに。 それでも、安心しきった表情で静かな寝息をたてるクラピカに、 レオリオは保護者の心境で満足気な微笑を浮かべる。 そして白い頬に唇を寄せ、ささやいた。 「……おやすみ、クラピカ」 寒い夜は二人でいよう。 そばにいて、抱きしめて、暖めて。 一緒に幸せな夢を見よう。 |
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END |
なぜ最初からダブルルームに泊まっていなかったのか問うてはならない(^^;) |