「KATAMI」


蜘蛛を追う車の中で
鮮血のこびりついたバングルを握り締める
手が震えた。


イワレンコフ
ヴェーゼ
トチーノ


数日しか顔を会わせていない
それでも『仲間』だった者たちが死んだ。
遺体すら残らず
一瞬の内に
無残に
─── 蜘蛛に殺された。


唯一の形見は
ヴェーゼの腕を飾っていたバングル。


私もいつか
この耳飾りが形見となるのだろうか。
母が私に遺したように
彼のもとへ届くのだろうか。


私は死など恐れない。
復讐の道を選んだことを
後悔してはいない。
─── だけど。


『死ニタクナイ』。


心の中で本音が叫んでいる。
それは死に対する恐怖ではなく
生に対する執着。
彼に出会うまで
そして愛されるまで
芽生えることのなかった想い。


彼を愛したことを
後悔はしない。
─── だからこそ


話に聞いた友人のように
彼をひとり遺したくはない。
私の形見を手にして嘆く
彼の姿を見たくない。


死ぬことは怖くない。
だけど死にたくない。


彼を悲しませたくないから
もう一度彼に会いたいから
彼と共に生きたいから


母の形見が耳元で揺れる。
これを私自身の形見になどしない。
なぜなら


私は生きて還るのだから。
私の愛する
魂の半身のもとへ。


─── 必ず。
                                    

        END       


アニメ53話を観て浮かんだ話…
というかポエム?
最後の一節を言わせたかっただけかも(^^;)