「Missing Link」 |
|
一触即発の危機を伴う紆余曲折の末、『鎖野郎』との取引を 承諾した幻影旅団は、人質二人を連れて出てゆくパクノダを 見送り、一息ついた。 いまだ不穏な空気は拭えないが、メンバーは各自、時間を 潰し始める。 戦利品が山のように積み重なったアジトの片隅で、ヒソカは 相変わらず、手の中で愛用のカードを弄んでいた。 新参の彼にとっては団長の生死も鎖野郎の怨讐も、あまり 興味の無い事柄なのだろうか。 いずれにせよ、ヒソカに流星街や蜘蛛の絆を期待するのは 間違いだ。 そんな考えを巡らせながら、マチはヒソカに歩み寄る。 気配を察し、ヒソカはふと顔を上げた。 鋭い目つきをした、世間一般では美少女と類されるであろう 少女が近づいて来る。 それを認識しつつ、ヒソカは、わずかに口の端を上げただけの 貼りついたような表情を変えない。 彼女は無言のまま、ヒソカの隣に腰掛ける。 「─── ヒソカ」 マチは呟くように、だけど吐き捨てるような冷たい口調で、 他の誰にも聞こえないように名を呼んだ。 さり気なくカードをめくりながら様子をうかがっていたヒソカは 目線だけで彼女を見る。 マチは彼の方を向かないまま言葉を続けた。 「あんた、あの黒髪の子と顔見知りなのをずっと黙っていただろ」 黒髪の子 というのは、先程まで人質になっており、パクノダと 共に出て行ったゴンを差している。 マチは以前、天空闘技場へ団長からの伝言を伝えに行った時、 ヒソカと戦うゴンの姿を目にしていた。 「でも結果的には、あの子のおかげでフィンクスたちとモメずに 済んだ。……あんたが何を考えて黙ってたのか知らないけど、 あたしも黙っててやることにする」 「……?」 ふと、カードを繰っていたヒソカの指が静止する。 「けどタダじゃないからね。─── フルコースくらいは奢りなよ」 そう言うと、不思議そうに見つめるヒソカの視線を払うように マチは立ち上がり、さっさとその場を離れてゆく。 「…………」 マチの背中を見送り、ヒソカ─── 実は変装したイルミ─── は 心の中で呟いた。 (今のは、ヒソカに伝えておくべきなのかな─── ?) ヒソカが偽者である事をマチは知らない。 マチが伝えた意味をイルミは知らない。 イルミが聞いた言葉を、ヒソカは知らない。 細い細い糸は、繋がることなくすりぬけていった。 |
|
END OVAを観て思いつきました。 「すれ違い」は私的ヒソマチのイメージなのです(^^;) |